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プレターゲッティング治療

免疫システムを担うもののひとつに「抗体」というものがあります。

抗体とは、特定の異物にある抗原(目印)に特異的に結合して、その異物を生体内から除去する分子のことで、一般的な抗体は「免疫グロブリン」というタンパク質です。

また、抗体が異物にある抗原と結合すると貪食細胞であるマクロファージや好中球を活性化して異物を除去します。

そして、がん細胞に対する抗体もあり、薬を載せた抗体を患者に注射することで、がん細胞に薬を直接届けて治療する方法などが研究されていますが、がん細胞に集まらなかった抗体が体の外に出るまでに薬の影響で正常な細胞にもダメージを与えてしまうという問題がありました。

今回紹介する「プレターゲッティング治療」も抗体を利用してがんを治療する方法のひとつですが、前記のようなデメリットを解決するために、2段階の方法を取っています。

まず、「抗体でがん細胞の位置を特定する」、次に「特定したがん細胞に低分子化合物で薬を送り込んで治療」するという方法で、これが「プレターゲッティング治療」です。

この抗体と低分子化合物は人工的に作られるもので、東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦教授が、コンピューターシミュレーションを駆使して設計と合成に成功し、2月18日に特許を出願したということです。

がんの位置を特定する抗体は「キューピット」と名付けられたタンパク質で、薬を運んで治療する役割を担う低分子化合物が「プシケー」と名付けられました。

具体的な手順は、まず人工的に作られた抗体「キューピット」を患者に注入すると、がんの部分に「キューピット」が集中します。

がんに集まらなかった「キューピット」は尿などとして排出されるため、1週間ほどするとがん細胞の部位が正確に把握できるようになります。

がん細胞の部位を正確に把握してから「プシケー」に抗がん剤やアイソトープ(放射性医薬品)を「キューピット」が結合したがん細胞に運ばせるという流れです。

このように「プレターゲッティング治療」では、がん細胞だけに必要な治療ができるのため、薬による副作用や被ばく量を抑えることができるようにもなるのです。

開発者の児玉龍彦教授によると「5年後の実用化を目指したい。」とのことで、意外と速い実用化になる見込みのようですから、期待したいですね。


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