ナノナイフ│最新がん局所療法
がん治療の放射線療法で「サイバーナイフ」や「ガンマナイフ」について以前解説しましたが、今度は「ナノナイフ」という最新治療方法をご紹介します。
この「ナノナイフ」は、放射線治療ではなく、「塞栓療法」や「ラジオ波焼灼療法」と同じく局所療法の最新版で、患部に針を刺し3,000ボルトの高電圧の直流電流を1万分の1秒という極めて短時間に流すことで、針の間にあるがん細胞を死滅させる治療法です。
もともとは、遺伝子実験で培養細胞に電流を流して細胞膜に小孔を開け、そこに遺伝子を導入するために用いられている技術を応用したものです。
ナノナイフは、2008年頃から欧米を中心として肝がんや前立腺がん、膵がんや腎がん、乳がんや肺がんなどの臨床に応用されており、近年では台湾や香港やオーストラリアなどでも導入され始めています。
そして日本では、2014年2月に東京医科大学病院消化器内科で初めて「肝がん」に対するナノナイフ治療の臨床研究が開始され、まずは先進医療の承認を急ぎ、2016年度中の保険適応を目指しているとのことです。
ナノナイフの有用性
ナノナイフは、これまでの局所療法である「ラジオ波焼灼療法」に替わる治療方法として期待されています。
臓器は主に線維から成る「間質」と、細胞で構成される「実質」でできています。
間質は臓器を形作り、血管や胆管、膵管や尿道などの管からできていますが、ラジオ波のような焼灼療法では細胞と同時に間質も熱で蛋白変性を起こして障害されてしまいます。
その結果、血管が壊れ出血を起こしたり、胆管、膵管などが壊れて胆汁や膵液が漏れて強い合併症を起こす場合もあります。
また、太い血管の近くにあるがんでのラジオ波治療では、血液による冷却効果のためにがん細胞が残ることもあり再発が多いとされています。
しかし、ナノナイフでは細胞は死滅しますが線維でできている間質には影響を与えず、血管や胆管、膵管や尿道などは障害を受けないのです。
がん細胞とともに周辺の正常細胞も死滅しますが、必要な正常細胞は2日~14日くらいで再生するといわれています。
このようなことから、ナノナイフはラジオ波に比べてより安全で治療後の機能障害の少ない確実な治療法として期待されています。
また、術後の体力の回復もナノナイフの方がラジオ波より早いと言われています。
今回、東京医科大学病院で開始された臨床研究は「肝がん」ですが、今後日本でも「膵がん」「肺がん」「乳がん」「前立腺がん」などでの適応が期待されています。
【追記】
国内初、ナノナイフによる膵がん治療
2015年7月24日に東京医科大学病院からリリースされた記事のタイトルです。
サブタイトルは「手術による切除不能な局所進行膵がんを対象に実施」。
今回ナノナイフ治療を受けた患者は70代の男性で、ステージ4Aの局所進行膵がん。1年前に診断され他臓器への遠隔転移は見られないものの、膵臓の周囲にある血管にがんが浸潤しているため、切除手術が不可能でした。手術ができるようにするため、放射線療法と抗がん剤の併用治療(化学放射線療法)を受けていました。しかし腫瘍は一進一退で切除手術はできませんでした。そこで、血管に浸潤しているがん細胞を死滅させ切除手術ができるようにする目的でナノナイフ療法が用いられました。
今回の治療を行ったのは、当大学病院の消化器内科と消化器外科・小児外科の合同チーム。ナノナイフ治療には、開腹して行う方法と皮膚の上から経皮的に行う方法があります。膵臓は十二指腸などの他臓器に囲まれたわかりにくい位置にあり、しかも、近くには太い動脈もあるなど、針を刺すリスクも考慮し、開腹してナノナイフ治療を行いました。
その後の検査では膵がんの縮小効果が確認されており、今後、血管に浸潤しているがん細胞が死滅した段階で、膵がんの切除手術を行う予定です。
今後のがん治療に新たな期待が持てる内容ですね。
ナノナイフのできる病院(2016年2月現在)
東京医科大学病院を含め4施設ありますが、実際にがんの患者さんを治療しているのは、東京医科大学病院だけです。
東京医科大学病院では、肝がん、膵がんを対象として臨床研究が行われています。
他には、
- 国立がん研究センター中央病院
- 愛知県がんセンター中央病院
- 岡山大学病院でナノナイフ導入
- 2016年4月より山王病院(東京都港区)でも対応予定。
ご自身やご家族やお知り合いが「がん克服」を模索しておられるようでしたら、ぜひ一度ご相談ください。長年の経験と実績を基にお役に立てるはずです。
がん克服事例
私が実際に受けてきた相談事例をご紹介しています。
また重複しますが、「末期がんの事例」と「現在継続中の事例」もピックアップしました。
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タグ:ナノナイフ
私は大腸がんから肝臓に転移して手術できないで、抗がん剤治療をしております
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